秘境冒険民宿業 鹿島 晴日さん
最奥の地の文化と暮らしを伝えたい
秘境冒険民宿 山人砦
鹿島 晴日さん
奈良田湖とその両側に聳える山々を見渡す高台に秘境冒険民宿 山人砦はあります。 爽快感溢れる絶好のロケーションの地で民宿を営む鹿島晴日さんにお聞きしました。
秘境冒険民宿 山人砦の仕事の流儀
お客様も私達もいつもワクワク出来る宿を目指しています。
自己紹介/施設・業務内容の紹介
山梨の秘境早川町、更にその最奥の奈良田では今でも自給自足の文化が色濃く残っています。また店名の“山人”は“山梨のマタギ”に近い意味です。そんな山人文化を感じてもらえる宿を目指しています。
山人砦のお仕事は何ですか
お客様を宿にお迎えする事は勿論、お休みの日には山や川で食材調達、畑やきのこ園の手入れ(管理)等、なるべく自給自足の食材でお客様をお迎え出来る様にしています。お食事の際には食材調達の様子をご紹介したり、時には一諸に食材調達に行ったりして楽しんでいます。
このお仕事を始めたきっかけは?
以前は早川町の文化を調査したり、発信したりする仕事をしていました。でもそれだけだと文化を残すのは難しいなと感じて、それなら「自分達でやってみよう」と思ったのがきっかけです。奈良田の山人文化を、まずは自分達が教わって身に付ける。そして、宿を通してお客様にも楽しんでもらえるようにできたら、文化自体も残せるんじゃないか。そんな思いで宿を始めました。(夫・健利さん)
鹿島 晴日とは?
色々な事に興味があり言いだしたら聞かない所があるみたい(笑)。自分なりのポリシーがありコツコツ積み重ねる側面も。
山人砦の夢は何ですか?
近々、山人文化体験サークル事業をリリースする予定です。奈良田の文化を好きになって、身に付けて、ドハマりしちゃうような事業にできたらと思っています。いずれは、ハマりすぎて奈良田に移住しちゃう会員さんも現れちゃったりして。目指せ!奈良田の人口100人!
早川町の魅力を教えてください
近所の山や川に出て活動してみたらコレがまた面白くて!今ではテーマパークの中に住んでいる様!
「この葉っぱ食べられるかなあ〜とか考えたり調べたりするのが、ね♪」と晴日さん。 奈良田集落に根を下ろして5年余り、今ではすっかり暮らしそのものを楽しんでいる明るい表情で話して下さいます。
宿の看板の料理について、「お料理は私にできる、来てくれる人を幸せにしてあげられる手段なので。まだまだ勉強中ですが」と話す晴日さん。ゲストルームの入り口にお行儀良く並ぶカラフルな大小の瓶詰め達が彼女の楽しみながらも積み上げてきた日々の努力を静かに語りかけてくる様でした。この様な保存食は伝統的な奈良田の暮らしにはすこぶる普通でとても大切なものだとも教えてもらいました。宿の周辺に自生する山菜や野草採り、自生と栽培の半々ですというきのこ採りのスキルも楽しんで身に付けたもの。罠猟やその捌き方まで、楽しそうに同じく狩猟の免許を持つ健利さんと一緒に学んでいますと話します。
お二人の思いは奈良田という地の文化と暮らしに対する純粋な興味とそれを大切に伝え残したい、そしてその種を蒔き育てたいというもの。お話を聞いた後 かつて奈良田にあった焼畑小屋をイメージして作り上げたというゲストルームを改めて見せて頂いてその決意の様なものを感じました。
晴日さんはご自身をマイペースだと言います。そして「早川町で一番好きな場所は自宅の周りです。そこで移り変る自然を観察しながら季節を楽しんで暮らしています」とも。そのフラットでナチュラルな佇まいが奈良田の自然や風土と重なって 訪れる人に癒しを感じさせているのかなと思いました。
生まれは愛知 実家は東京という晴日さん、彼女の心を捕らえた奈良田の文化と暮らしを凝縮させ更にはエッセンスを抽出した様な体験が出来るのがこの秘境冒険民宿山人砦なのですね。
👀筆者主観的目線〔二人で育てているもの〕👀
お二人が奈良田の地で民宿を営むと聞いた時は驚きました。
前の職場で一緒に働いている姿を見ていた筆者にはお二人がその様な夢を抱いているとは微塵も想像出来なかったものです。便利な場所とは言い難く、厳しい季節も巡り来るこの町の最奥地でお宿を営むと。筆者は生まれ育ちも早川町ですが正直イメージ出来ませんでした。
今回お話を聞かせていただいて今度は逆の意味で色々驚かせて頂きました(笑)。 先ず、お二人が本当に暮らしを楽しんでいるという事。優しくも厳しくもあるこの地の四季と自然をお宿の名前通り冒険する様に日々を歩んでいる。そしてそれを誰かに伝える事を糧として変えこの地の文化も残して行きたいと考え実際に活動を始めている。あくまでも楽しみながら。
視点を変えるとかいうレベルではなくて 新しい価値観を見出して生み育てているのだなと思い至りました。そしてこれは筆者の様な生まれも育ちも地元、という人には返って難しい事なんだろうなと何だか少し[降参]した様な気分にもなりました。
奈良田湖を吹き渡る風の様な爽快感と共に。
取材:望月 千賀子