一棟貸しの宿 ・手打ち蕎麦屋 鞍打大輔さん

山の豊かさを分かち合う暮らしと心

古民家一棟貸しの宿 月夜見山荘・手打ち蕎麦と山の食 おすくに
鞍打 大輔さん

日当たりの良い傾斜地の集落、その中ほどにすっくと立つ月夜見山荘とおすくに の二つの建物。
開業から5年目を迎えて季節毎に変わる山の恵みの収穫、様々な作業等。何となく掴めてきたかなと話す鞍打大輔さんと佳子さんご夫妻にお話を聞きました。

古民家一棟貸しの宿 月夜見山荘・手打ち蕎麦と山の食 おすくに 仕事の流儀

地元の食材、地元の食べ方など、地元早川にこだわる

月夜見山荘・おすくにのお仕事は何ですか?

月夜見山荘での宿泊サービスとお食事のご提供、おすくにでの手打ち蕎麦、山菜、きのこ、川魚、ジビエ(狩猟 採取)調理等 お食事のご提供。

この仕事を始めたきっかけは?

山の豊かな暮らしを自分も実践しながらお客様にも伝え 分かち合いたいと思ったから。

月夜見山荘・おすくにの夢は何ですか?

早川の野山・川で昔の様に山の恵みがたくさん採れる環境を取り戻す事。

 

 大輔さんに早川町で一番好きな場所はどこですか?とお聞きすると「ここ西之宮集落の十二神社からの眺めです」と言われるほど鞍打さんご夫妻のこの地への思い入れにはとても強いものがあります。 開業を決めてから中々その場所が決まらずに苦慮していた所、一つの縁をきっかけにまた次々に縁が繋がり「まるで導かれる様にしてここに決めることができたんです」と。そしてやはりここだな、と確信の様なものを感じたと言います。十二神社に祭られているのは月読命(ツクヨミノミコト)で食文化の神様でもある事から『月夜見山荘』と『おすくに』と、名称を拝借しました(HP参照)と。
大輔さんにお話をお聞きしているとこの神社の起源やかつてこの土地に暮らした人々、その歴史などを紐解いて行き そしてこの地に根付くきっかけを見つける度にこの地とここに暮らす意味をとても大切に思われているのだなと感じました。

 自分で食材を調達して お酒のおつまみを作ったりする事が大好きですと言う大輔さん。佳子さんと研究開発したメニューも随分増えました。愛犬と共に山に入り 山菜やきのこイワナやヤマメ等の食材探しや、時にはグループで行う狩猟に参加したりします。猟の後 獲物を肴に仲間と囲む反省会と言う名の酒盛りは古くから行われて来た山の恵みを[分かち合う]ひと時。山の幸の前で感謝して仲間と心を通わせる大切な時間です。「先輩方の料理もとても参考になります。」と、趣味と実益を兼ねた山里暮らしを楽しんでいる様子です。

   暮らしを楽しみながらも思うのは山の過去と未来の事。「本当はもっと豊かだったんだろうと思います。きのこにしても諸先輩方に聞いてももっと採れたと。山菜ももっと採れていたと。下(地面)から生えているものは殆どないです。」シカの食害によって環境がかなり変わってしまった、きのこなどは植物と相関関係なので植物が無くなると影響大で。微妙なバランスがあり適地が必要なんです。と。 早川の昔の環境を取り戻し また山の恵みがたくさん採れる様にしたいと願う大輔さん。今は何をしたら良いのか分からないけど..と言いながらも いずれやってみたい事として山荘周辺の里山の整備、遊休農地に手を入れて良い環境になったら良いなと思っています。と話して下さいました。

 奥様の佳子さんは大輔さんの事を「真面目で頼り甲斐があり、色々な事に真剣に取り組んでくれます。」と言われ、大輔さんは佳子さんを「いつもフォロー、リカバリー、カムフラージュしてもらえる有難い存在です。」と言っておられました。お二人は食べ物の好みやお酒好きな所も似ているそうで(そうでなかったら一緒に暮らさなかったとも)、そんなご夫婦で積み重ねた楽しく大切な時間と場面が おすくにと月夜見山荘を営むベースになっているのではないのかな とも思えてきます。 そしてまたご夫婦とご家族も加わり[反省会]をしながら、新しいメニューの話や試食など更に新しい時間を積み重ねている場面が目の前に浮かんで来る様でした。大輔さんにお聞きした月夜見山荘とおすくに に込めた[分かち合う]という想いは この地の先人からお二人に繋がり、お二人のご家族に伝わり 次はここを訪れる方々の心に拡がって行くのだな、と 里山の夜を暖かく照らす2棟の灯りに思い巡らせました。

👀筆者主観的目線👀〈佳子さんのお蕎麦〉

先日ランチ時、おすくにさんに出掛けて来ました。前回[はやかわ割子]をいただいたので今回は[鹿そば]をいただく事に。
鹿肉はおそらくは大輔さんの仕留めたであろう物、一口サイズでちょうど良い甘辛味に仕上げてありました。漂う野生の鹿肉の風味もほんのりと、とても繊細で喉越しの良い佳子さんのお蕎麦を邪魔する事無く温かいお汁と共にバランスのとれた美味しさでした。
前にいただいた[はやかわ割子]はこの土地の季節の山菜などが一緒に味わえる爽やかなお蕎麦。彼女の打つ繊細で香り高いお蕎麦はデリケートでありながらも、四季を通じての様々な食材とも寄り添う事の出来るしなやかさと強さを持ち合わせているのだなと感じました。この町の食材、一癖二癖ある物も多い様に思うのですが。
以前、とあるアーティストの方が「佳子さんのお蕎麦はとても綺麗なの」と言っておられた事を思い出しました。それは 味 形 喉越し 香り、そして彼女そのものを称え応援する言葉だった様に思えます。そう、まるで佳子さんの様なお蕎麦なのです。

取材:望月 千賀子

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