ユネスコエコパークステーション・古民家カフェ鍵屋 小森由美子さん

早川町の最奥、奈良田集落の木々の中に立つ古民家カフェ鍵屋。
床や柱の艶も美しい囲炉裏端の席には優しい日差し溢れていました。

小森由美子さん

 

施設の流儀、おもてなしこだわりポイント

早川町ならでは、自然の中というのを大事にしていて、音楽などは鳴らさないようにしています。外から聞こえる鳥の声や風の音を感じられるように。ここは屋根に巣があってミソサザイ(小型の野鳥)が住んでいるんですよ。そこから鳴き声がするとお客様はBGMがかかっていると思われて。ここでは本物が聞こえてくるんです。そして暖かくなると縁側、外の席を作ります。東京の街中でもオープンテラスとかは人気なので、やはり皆さん求めていらっしゃるんですね。メニューは地産地消を心掛けており、持ち帰りのジャムやお菓子は無添加にこだわっています。食器は地元の作家さんにオリジナルで作ってもらったものを使いそこからも早川を感じてもらっています。

施設の仕事の内容を教えてください。

鍵屋は南アルプスユネスコエコパークのステーションとしての機能もあり、エコパークのパネルやパンフレット設置と古民家カフェを営業しています。また鍵屋の両隣にある南アルプス山岳写真館白旗史郎記念館と早川町歴史民俗資料館の管理もしています。

この仕事を始めたきっかけは?

カメラマンの仕事もやっているので山岳写真館の写真の入れ替え作業を頼まれて、奈良田に通って来ていました。写真館の作業をしていたのですが、すぐそばの鍵屋が地元のおじいちゃんたちが開け閉めをしているだけで、殆ど何も使われてない状態でありました。 その内に通って来ている私にお話があり何か企画を出して欲しいという事になり、エコパークステーションとカフェの運営に携わる事になりました。

小森由美子さんとは?

思ったらずっと思っていられない。すぐに行動しないとだめで、やらないでいたりすると悶々としてきてしまうんです。やるとなったらすぐにやってしまいたい、で、結果をすぐに見たい。それでだめだったらまた..。みたいなテンポですね。いつも自分がやりたいように動いていくのでいつも現状が気に入っています。

施設の夢はありますか?

ここは早川町の一番奥なので、とりあえずここまでお客様に来ていただこうと。そして早川町での滞在時間を長くしていただければ、ほかの施設やお店にも寄っていただけるかなと思っています。あと自然の中での野外アートもやってみたいですね。そして鍵屋をやるにあたって奈良田を知っていく上で文化や歴史が独特で。歴史とかあまり好きではないのですが、奈良田はすごく面白いんです。それを継承していくのが役目かな、なんて思ったりしています。

早川町の魅力を教えてください

来たばかりの頃よく、何で早川町に来たんだ?って、住んでいる方には言われましたね。都会にはないものがあるという感じがするんです。都会には不必要なものはたくさんあるけど、必要最低限のもので暮らしているというのはすごく魅力を感じます。あと、工夫して生きているというか、お金を払って誰かにやってもらうという発想はここには殆どないですよね。そういう所が魅力というか本来そういうものじゃないかなと。どちらが良いかわからないけど、私にはその方が合っていた気がします。子供達の体験も大きかったですね。来てすぐに、星がきれい!とか、都会では苦手だったけどすぐそこに生えている椎茸は食べる事が出来たとか。早川だから経験させてあげられた事だったと思います。

早川町の好きな風景は?

それはもう新緑です。一番。最高ですね。通勤の時に楽しんでいます。早川町は南北に長いから桜もそうですけど、町内で季節が全く違うように見える、それも楽しいですよね。 先日早川町の殆どの地域が雨で奈良田だけ雪だった時、何だか特別感があって良いよね~ってスタッフと話していました。

好きな言葉はありますか?

『想像はゼロに等しい』でしょうか。人ってネガティブに考えちゃうことあるじゃないですか。その時間はもったいないですよね。考えているより動き出しちゃった方が、展開が生まれてくるので、その言葉が元になるんです。人とのコミュニケーションでも救ってくれることがよくあります。

 

 

👀筆者主観的目線👀〈巣立った後〉

早川町に移住してくる人々の多くが子供の山村留学に伴い、というものですが、小森さんもそのひとりです。小森さんは子供達に生きて行く上での選択肢を与えてやりたかったと言われました。そしてここに住んだ事が単なる思い出だけではなく確かな経験として、子供達の中に根付いている実感があるようです。お子さんの一人は遠くはなれた離島に就職して暮らしているそうですが、早川で過ごした経験があってこそなんですよと。 子供達は育ち、手を離れ、小森さん自身は早川町の暮らしを継続していく中で、まだまだやりたい事や取り組んでいきたい事がある様子です。東京でもお店を共同経営したり、キッチンカーで回ったりと、接客業の経験値はかなりのものです。現在のカメラマンという職業も子供の頃からやりたかった仕事でしたと言われ、自分のやりたい事に真っ直ぐに向かっていく姿勢にはパワフルでしなやかな強さを感じました。 早川町の抱える慢性的な人口減少の問題も真剣に捉えていて、「きっと方法があるはずなんですよ」と前向きに話されました。小森さんとお話ししていてこんな大きな問題だけど、一町民同士が茶飲み話の話題になることが解決に向かう一歩かな、と感じました。 そして帰り際、鍵屋の屋根に住むミソサザイが何世代も住み続けてくれることを心から願って、赤い屋根を見渡しました

 

 

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