光源の里温泉ヘルシー美里・南アルプス邑野鳥公園 松本哲矢さん

人と自然の共生を目指して

光源の里温泉ヘルシー美里・南アルプス邑野鳥公園
松本 哲矢さん

遠い日に本来の役目を終えた木造の校舎。整然と並ぶ下駄箱、駆けあがった階段、教室の扉。その記憶の中の懐かしい佇まいをそのままに宿泊施設としてリノベーションされ、利用されているのがヘルシー美里です。そのヘルシー美里と野鳥公園でスタッフとしてネイチャーガイドとしてお勤めしている松本哲矢さんにお話を聞いて来ました。

ヘルシー美里・野鳥公園の仕事の流儀は?

「理念」 自然を守る、地域を守る 「仕事をする上で心がけていること」 「協同」という気持ち。お互いに助け合いながら一つの物事を運営していくという気持ち。

ヘルシー美里・野鳥公園の仕事は何ですか?

温泉宿泊施設運営、ビジターセンター管理、ネイチャーガイド、生物調査と自然環境の保全活動。

このお仕事を始めたきっかけは何ですか?

幼いころから自然や生きものが好きで、何かしら自然と関わる仕事がしたいと思って。 特に自分は生きもののことをきちんと知りたいという思いが強かったので、生物調査が出来るこの会社を選びました。

ヘルシー美里ならではのおもてなしとは?

我々が接客をする上で大切にしていこうと思っているのは〈ホスピタリティー〉です。これは宿泊業では一般的な事なのですが、それをベースにしながらお客様をしっかり観察する事でお客様が何を求めているかみんなで想像しながら心がけて接客しましょうと意識しています。これはガイドをする時にも意識しています。また、失礼になり過ぎない程度にフランクにと言うか気さくな明るい宿にしたいと思っています。

楽しいなと思う事、やりがいを感じる事などはどの様な場面ですか?

お客様と仲良くなれた時にやはり一つの達成感を感じますね。自然観察をしていて同じ喜びを共有できた時などは、とても嬉しいです。 他には私がガイドをした、一緒に調査した子供達が大人になって進路を決めるとなり、「環境教育や自然系の業界とか学校・大学を選びました」というお声を最近いただく様になってきていて‥。それがもう私の中でかなり嬉しいです。 そして自然の保全活動をしていて、ある生物の数がちょっと増えてきたとか、一旦いなくなったものがまた増えてきたとかそういった成果もまた非常に嬉しい事ですね。

施設の夢は何ですか?

人と生き物が共生する社会、地域をつくる事。

早川町で一番好きな場所を教えて下さい。

朝日が射し始めた瞬間の風景が好きです。どこというより早川町全体表情が違うなあって。日が射すというのもそうですが朝霧が立っている時もありますし、山の上に光が射し始めてそれが段々下がってくる‥あの感じが好きです。あれって日が上がりきってしまうと正直あまり変わらないんですけど、あの時間ってじーっと見ていると目に見えて変化していくので楽しいし素敵だなあと思っています。

 

 

 広大な手付かずの自然の中に人が暮らす早川町。その中でそれを訪れる人に紹介して楽しんでもらい、目を向けるきっかけを作ったり、調査や保護、保全など日常が自然と共にあるお仕事をされている松本さん達。数年前に南アルプスがユネスコエコパークに登録され早川町全域がその対象になった事で、改めて活動の意義と施設の存在意義を再認識されている様です。

 松本さんにお聞きした中で印象に残ったお話の一つに『一度手を入れた自然は手を入れ続けないと維持出来ない』というものでした。田んぼなどは良い例です。あれは人が水田という環境を作ったおかげで、そこを多くの生物が利用するようになった自然環境です。そのため田んぼが無くなると、それまで暮らしていた生物たちが危機に陥るわけです。しかし、自然や文化、残しておきたいものが早川町にはたくさんあるけれど、正直今の町のマンパワーでは残していけない現状がある。(訪れる方に)早川を気に入っていただいて移住してきていただいて、それを伝えて残していく為の力になって欲しいなぁと思いますし、私もなるべくその力になりたいなぁと思い早川町に住んで活動を続けております。と、言われました。また、この町の豊かな自然を残していきたいし、残していく為には地域がないと自然も残らないので。とも言われ、長年全く手入れされていない山の現状を『維持出来ない自然』と、危惧されています。自然の中でそれを上手く利用して暮らしていく(エコパーク移行地域)糧に繋げていくために、先ずはそこに住む人と地域づくりを‥と。
「早川の自然が守られ保たれ、町そのものがもっと発展して良くなっていく様に。それこそ南アルプスユネスコエコパークの理念と近いものだと思っています。」自然と共に生きるという、そこに向かって早川町が発展していけると良いなあ、その力になれれば良いなぁと思って活動しています。と話されていました。

👀筆者主観的目線👀〈種を蒔く、という事〉

早川町に住み10年経った松本さんですが、まだまだ知らない事や行った事のない場所がたくさんあると言います。早川町は広いからそれだけ魅力もあるのだと思うし、それを外に向けてしっかり発信する事とプラスしてもうひとつ、内側に向けて町民がまだ知らないこの町の綺麗な風景や魅力的な事柄などをPRするというのも大事だと思うと話されました。それは町民一人一人が町に愛着や誇りを持つことに繋がり、日常の活力にもきっとなるはずです、と。人口流出的な事もそうですが愛着があると戻って来てくれるかもしれない、何とかここに残る努力をしてくれるかも知れないと思うんです。とも言われました。

筆者が子供だった時代、この町でその様な方向性の何らかの導きはあったのだろうかと最近よく考えます。成長するとこの町を出ることしか考えていなくて、またそれが普通の考え方だった当時、年端もいかない若者にいずれ戻ってくる事など頭の隅にも無かったのではないか。‥
我々も子供達と関わらせていただいていますが、どう地域に目を向けるかというのは中々難しい事なんだなあと思いながら接してます。と松本さんは言います。一番身近なものに目を向けるという事の意外な難しさ。隣の芝生は青く見える、ですよね(笑)

松本さんは続けて、我々はこの町の自然的な側面から早川の外にも内にも伝えられる活動をしたいなと思い、それで自然も守れて地域も守れてみんなが好きな早川にしたいなと思って色々やっている所ですが、と。 
松本さん達が取り組んでいる事は広大な自然と長い時間の流れの中で結果を紡ぎ出す作業が大半で、直ぐに答えが出てくるものではない様に思います。それでも大切なことは種を蒔き続ける事であり、アプローチし続けるという事なのだなと感じました。人の心に蒔かれたその種には長い時間が必要ですが、松本さんは10年程経って芽が出てきたお話をとても嬉しそうにされていました。
スケールの大きな自然相手の、時には何世代にも渡ることもある仕事だけにやはり大切なのは人、仲間と地域づくりなのかなとも強く感じました。
松本さんは「ヘルシー美里の運営信条の一つでもある“共同”は町と地域の皆さんとの“共同”とも通じる事で、一緒に何かを作り上げていくというのも大切な事ですよね。皆さんと何か自然に直接アプローチをかけられる様な事とか考えていけたら。」と、いつもの穏やかで少しワクワクする様なトーンの声でお話しして下さいました。

 

取材:望月 千賀子

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